拝啓、反転の世界より。

「あいつ、また鏡の中に篭ってんのかよ?」
不機嫌そうな面構えをしたギアッチョが口を開いた。

「しょーがないじゃん。あいつにとっては鏡が落ち着ける場所みたいだしさー」
メローネが後方の大鏡を指差しながら返す。
あいつ呼ばわりの彼の名はイルーゾォ。

この3人、今日は任務無しということでオリコーサンにお留守番である。

「プロシュートとペッシは昨日から泊りがけの任務、リーダーとホルマジオは単独でそれぞれ別の任務…だっけ?ご苦労なこってェ〜」
メローネはソファーにダラリと体を横たえ
気だるげだ。


「あれ?そういや、ソルベとジェラートは?」
ふと体を起こしてギアッチョに問い掛ける。

「あいつらのことだからどっかバカンスにでも行ってイチャイチャしてんじゃねーの?」

「ったく、あいつらチーム内恋愛謳歌しやがってムカつくわーー」
メローネはそう言い捨てると、また力無くダラリとソファーへ身をあずけた。

二人のやり取りを鏡の世界で聞いていたイルーゾォの体が僅かに、揺れる。
(同じチーム…か)


「…少し出掛けてくる。」
そう言うと、鏡に映っていたイルーゾォの姿がスーッと消えていった。

「鏡の中で移動したってことは、どっか鏡ある所に行ったんだよな、あれ」
「うっかりソルベとジェラートの寝室の鏡にでも行っちゃいますよーにッ」

メローネがケタケタ笑うと、ギアッチョは呆れた顔で溜息をついた。






ーーーーーーーーー……


「第一堂々と会いに行ったら殺意剥き出しで出迎えられるだろうしなー…。……お、ここだ。」

イルーゾォの目には、なんとも特徴的なスーツを着こなす青年の姿が映った。その隣には幼げな顔をした青年。

「うわ、1人じゃなかったのか…。それにしてもよく一緒にいるなあいつら……」
イルーゾォにちょっとした苛つきがつのる。それと同時に痛む胸。



「フーゴぉ、暇だから構えよ〜〜」
「ああ、もうォ、暇なら勉強でもしてろよ」

「折角二人でオフなんだぜ〜?たまには仲良くあそぼーーぜーーー」

「幾つだよお前は!前だって僕より年上だって誇張してたろっ」

「だぁかぁらー、年上の俺が年下のフーゴクンの遊びの相手してやろーって言ってんのォ!」
「あああ!もう、黙れよ!!」

イライラするフーゴを楽しげに見つめるナランチャ。

(めちゃくちゃ仲良さげだし…くっそ……)

イルーゾォは見るに耐えないとばかりにくるりと背を向けた。
(出直そうかな………。)



「あ!そーだ!俺さ、ブチャラティから美味しいビスコッティ貰ったんだ!一緒に食べようぜ!」

怒りで顔に影が差し出したフーゴを見て、流石にヤバイと思ったナランチャは思い付いたように口を開いた。

「取ってくる!」
そう言い残し、バタバタと部屋から姿を消す。

「チャ、チャンス!ヤツは一人だ!
今だッ」
イルーゾォは鏡から身を乗り出そうとした。まるで今から不意打ちでもくらわせるかのようだ。

そう、初めて出会ったあの時のように。


イルーゾォが鏡から自分が出る事を『許可』しようとしたその時、フーゴが口元を緩めながら
「…まったく。でもまぁ、あんなところも可愛いんですけどね」
と呟いた。

確かにその言葉はイルーゾォの耳に入り、その言葉は先程のナランチャの事を指しているのは明白であった。
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